さむぞらにきこえないひめい





金髪が雪に透けて消えそうだ。手足を投げだし地に埋もれているそいつを、助けてやろうとは思わない。傍らに立ち、ただ見下ろしている。

「あー」

間抜けな声が俺の耳に届いた。そこにこめられた感情は空気に打ち砕かれ、俺はただの音を聞く。

こうやって見下ろして目を合わせていると気が狂ってしまうのではないかと思った。思ったが見つめ続けた。見下ろされている奴はなにがおかしいのかうっすら笑っている。それが俺には不快で、やめろと言いたい。

「聞こえてる?」

聞こえている。見えている。感じている。だからこそ嫌なのだ。俺が無意識のうちに拒絶しているなにかがこの場を不完全なものとしていて、結局俺は自分で自分の首を絞めている。

いっそこの奴を殺してしまえば、俺は自由になれるのだろうか。

「なあ、我愛羅」

うずまきナルトがなにを思って雪に埋もれているのか、俺には分からない。冷たい風が吹いて、肌が裂けそうだ。


「キスしようぜ」


俺は黙ってひざをつく。唇は凍えきっていた。