終結した世界の鍵穴






寝床は、不思議なほど冷たい。シーツも毛布も、拒むような温度で俺を包む。まるで所持者でない自分を軽蔑しているようだ。そう考えると自分のベッドはなんと従順なんだろう。

物は持ち主に似るものなのか。そんなことを考えながら隣の顔を覗き見た。


眠っている我愛羅というのは、なんとも表現しづらい。なんともいえない。強いて言えば、見えない膜のようなものに包まれているようだ。我愛羅という存在がその膜のせいでひどく遠く感じられる。こんなに近くで顔をつき合わせているのに。


しかし間近で見る我愛羅は本当にきれいだった。いつもの攻撃的な瞳は閉ざされ、白く美しい肌やそこに深い影を落とす隈や少し茶色がかった赤い髪などの全てが、完璧だった。

触りたい。それは純粋な欲求だ。触って自分のものとしたい。しかし、膜が。


ナルトは毛布の下に潜っている手をそうっと横に動かした。音を立てないように、慎重にじりじりと接近を試みた。部屋にいるのは二人だけだった。心臓が音を響かせていた。



人差し指に、冷たくて滑らかな感触が走る。胸が裂けそうになったその時、目尻がつうんと痛んで、涙が出てきた。



ナルトはその手で頬を拭った。とても触れ続けることはできないと思った。やはり膜とは違う。もっと危険で、むき出しの我愛羅自身が持っているものだ。それがなんなのかは、たぶん一生分からない。


冷たかった毛布が、シーツが、体温を吸い取って温くなっている。急に眠気が沁みてくる。無意識の世界に落ちていくのを感じながら、明日起きたら我愛羅になんて言おうかと、回らない頭で考えた。