「あのさぁ」
その日の木の葉隠れの里はよく晴れていた。部屋の窓から健康的な光がさんさんと差し込んでいた。ベッドの上でその光を浴びながらまどろんでいた我愛羅は、ナルトの声に閉じかけた目を開ける。
ナルトは膝立ちになって枕元に腕をついていた。赤子を見守る母のような格好。もちろんナルトも我愛羅もそのような連想を出来るような生い立ちではない。ではないので二人は大した恥じらいもなくそのまま目を合わせた。
「なんだ……」
眠気の伝わってくるふわふわした語感は密かにナルトを喜ばせる。自分にだけ警戒心を解いている我愛羅の、こんな声を聞けるのは自分だけだ。
ナルトは赤茶の髪をそっと指に絡めながら目を細めた。
「俺らさぁ、一緒に暮らせねえかなあ?」
そっと、甘い響きで囁くように言う。髪を離し、優しくそこを撫でて整えた。
その日は何もかもが暖かくて、まるでこの世に不幸なんて存在しないような、そんな完璧な均衡が保たれていた。だから。いや、だけれど。
「無理を、言うな……」
命令とも感慨ともつかないニュアンスで発せられた言葉に、ナルトは黙って手を我愛羅の頬に滑らせた。そこは日の光を浴びたせいか、珍しく温かかった。
無理なことは十分承知している。
けれども、夢を見るのは止められないのだ。
「……夢か」
「え?」
なんで自分の考えていることを。ナルトは目を見開いたが、我愛羅の瞼はゆっくりと落ちてゆく。
「夢なら……暮らせる……」
吐息のような声を最後に、我愛羅は眠りの海に沈んでいった。
「……夢なら、か」
ナルトは微笑んで手を引っ込めた。立ち上がってベッドから離れ、タンスにしまっていた毛布を取り出す。
「おやすみ、我愛羅」
夢で会いましょう。
(了)
自分では甘くしたつもり、です。ていうかたまには甘いナル我も書かないとと思って急造したものなので私的にあまり気に入ってません。甘いナル我はすきなんですだから余計に。加筆修正したいです。
やっつけ仕事にやっつけ仕事を重ねて申し訳ありません……;